Diary | 竹田写真館の十周年展
竹田写真館の十周年展 特別公開 最終回 父と母
今までカメラマンをやっていても
父母を撮るなんてことは殆どありませんでした。
これも写真館を始めたことによる恩恵です。
いまだにこの歳になっても男というのは
照れがあって面と向かって
親とは本音で喋れません。
たくさんの会話もしません。
感謝を伝えれません。
ただ一年に一度の
撮影の日は、いい写真を撮るために、
他愛もない話をしながら
笑顔を引き出して撮影します。
撮影というスイッチのおかげで
いつもより少し踏み込んで
自分の思いも言えたりします。
でも毎年、今年が最後になるかもしれない
という気持ちも常に持って
シャッターを切っています。
年々そう思います。
切ったシャッターの数が
物語っています。
コロナなどで、
2年ほど撮影が
飛んでしまいましたが
10年で8枚の写真が残せました。
初年度は21枚、次の年が17枚、
翌年29枚、12枚、16枚、24枚、35枚、
コロナになってから最初の撮影は69枚。
一昨日がまさに2022年の撮影日だったのですが、
59枚でした。
最初の方は照れもあって
なんとも少ない枚数ですが、
親の老いと枚数が比例していきます。
コロナも影響していると思います。
最初の方は恥ずかしくて
早く終わらせたいと思っていた時間が
年々愛しくなってきているんでしょう。
今回の展示で初めて
親の写真を並べて見返えしました。
一年一年だと
それほど変わりはありませんが、
10年で見比べると
本当切ないほどの変化がありました。
髪が薄くなり、
白髪が増え、
シワが増え、
姿勢も丸くなり。
自分自身も
もう生涯の半分はとっくに過ぎ去り、
残りの時間を考えるようになってきました。
もちろん両親との残された時間も
刻一刻と迫ってきています。
でもそんなことは
大きな病気になったり、
身近な人が亡くならないと
気づかない、考えないことです。
写真館というのは
そういう
いろんな思いが交錯する場所でもあるんだなと
写真館を始めたことで
改めて気付かされました。
年に一度、両親の写真を収めながら、
不思議な時間を過ごしています。
未来ある時間もあれば
残り限られた時間もあります。
それこそが人生というか
だからこそ
輝けるし、
愛おしいし、
美しい。
それぞれの家族が歩んできた歴史、未来が
写真館にはあるのです。
ホームページの冒頭にあるように
さまざまな想いが重なって
写真館を始めましたが、
一番背中を強く押してくれたのが
東日本大震災の津波で流された写真を
探す被災者の姿でした。
写真が
誰かの気持ちに寄り添ったり
救えることもある
写真の持つ力に触れ、
自分の思いが確信に変わりました。
今回、
「竹田写真館の十周年展」で展示をさせていただいた
お写真が920枚。
今回ダイアリーとSNSで掲載させていただいたお写真が
そのうちの107枚。
このような機会を
設けさせていただいたのも
写真館での撮影が一生に一度のもではなく、
またハレの日だけのものでもなく、
親が子を思い、
子が親を思う。
誰かが誰かを思う。
そんなごく普通の。
もっと日常に寄り添った
身近な存在になれば、
そうなれば
きっと街にはたくさんの
素敵な写真館で溢れるはず。
そんな時代になればという願いでもありました。
最後に展示、掲載を許可していただきました皆さま
改めまして本当にありがとうございました。
以上をもちまして14回に分けて投稿させていただきました。
特別公開終了とさせていただきます。
竹田写真館の十周年展 特別公開 それぞれの家族写真 03
最近の嬉しいことの一つに
若い世代のお客さまが増えてきたことが
あげられます
10年前、37歳になったばかりで始めた写真館
当初のお客さまは同年代か、
若くて10歳位年下の方がほとんでした。
話の内容も、感覚も近く
それはそれはいい時期を過ごさせていただきました。
現在は、本当にありがたいことに、
20歳くらい下の年代の方も増えてきています。
ちょうど自分と自分の子どもの間くらいの世代の方です。
平日の仕事でもその世代の方が増えてきて
人生の後輩というより、子供に近い歳の差。
後輩ぐらいの年齢差だと、
自分の物差しをぶつけがちですが、
歳の差がある若い方々に対しては
羨望の眼差しです。
キラキラしていて、どんなことを考えて、どう思っているのか
興味が尽きないです。
なので、ついつい質問攻めに。
知らないことを知れるのは
何歳になっても楽しいことです。
そして、そんな年代の方々に
面白がっていただけるのは、
本当に本当に嬉しいことです。
竹田写真館の十周年展 特別公開 それぞれの家族写真 02
小さいお子さんと一緒に来られるお客さま、
当然、親御さんはお子さんの良い表情を
撮ってほしくて写真館に来られます。
色々と
お気に入りのおもちゃを持ってきたり
YOUTUBEで好きな曲を流したり。
必死になって、我が子の笑顔を引き出そうと
とても良い風景です。
親御さんの表情もなんとも幸せそうです。
もちろん、竹田写真館も
今しかない
お子さんの良い表情を残そうと努めます。
ただ、それ以上に
親御さんの良い表情を残そうとしています。
大きくなってお子さんが写真を見返した時
まだ記憶のない頃の若い親が
なんとも良い表情で自分と写っている。
結局、家族写真は
親が子に残す言葉のないメッセージなんだと思います。
こうやって
小さい自分を連れて
写真を残してくれてたんだな。
そう思うだけで
お子さんには伝わるものがあると思います。
「何この髪型ー」
「え、こんな服着てたん??」
「若っ!!」
ある程度の年齢になると
いじられることもあるかと思いますが。
内心嬉しいはずだと思っています。
お客さまのオーダーがあれば
撮影はするんですが、
竹田写真館が表向きにソロショットを撮らないのは
そういう意味です。
肖像写真もお断りしています。
個人の写真を撮る写真館ではなく
関係性を撮る写真館なのです。
竹田写真館の十周年展 特別公開 それぞれの家族写真 01
今回の特別公開ですが、
本来なら、展示させていただいたお客さまのお写真
全てを公開させていただく予定でいました。
そのために皆さんに展示の許可を伺う際に
SNS掲載の許可も
同時に確認しておりました。
残念ながら
とてつもない枚数であることと、
撮影、作業が続き、
断念しましたが、
その一部として、
今回「10組の家族写真」を
公開させていただきました。
こちらは一組一組の歴史を
時系列に沿って
並べさせていただきました。
今までこうして
写真館のお客さまの
お写真を掲載させていただく機会が
なかったので
すごく反響もありました。
そういう声を聞くと
また欲が出てきまして、、、。
他にも
竹田写真館には
色々なお客さまが
いらっしゃることを
知っていただきたい。
当たり前ですが、
同じ家族はいない。
様々なご家族の形があって、
それぞれ歴史があります。
ご家族になりたての方もいらっしゃれば、
何十年と一緒に過ごしてきたご家族も
いらっしゃいます。
そんな皆さんに
10年間本当にたくさんのことを教わり、
人としても成長させていただいています。
本当にたくさんのご家族の中から
毎年お越しいただいている方も
1枚に絞らせていただいた上での
30組のお客さまの貴重なお写真。
「それぞれの家族写真」と題し
3回に分けて公開させていただきます。
竹田写真館の十周年展 特別公開 10組の家族写真 10
毎年1時間、
10年通っていただいても10時間。
普段の仕事だと
初めましての方でも一日で
そのくらいの時間
ご一緒することもザラにあります。
でも同じ10時間でも全然違う。
1日の10時間と、10年の10時間。
こんなに知っているのに、
こんなに長いお付き合いなのに
まだ10時間。
不思議な気持ちになります。
また普段の仕事の撮影では、
撮られたくない方もいらっしゃいます。
色々と気を遣いながら、
様々な角度からアプローチしながら
ベストな写真が撮れるように
心がけます。
僕のこともほとんどの方は知らないと思いますので
撮影に来たカメラマンといった認識でしょうから
写真が苦手な方でしたら
そこも最初の大きな壁です。
でも写真館のお客さまは
竹田写真館のことを知っていただいた上で
皆さん写真を残したくてお越しいただける。
もう完全ホームグラウンドです。
なのでカメラの前に立った時点で良い表情。
最初に姿見を見ていただくのですが
まさにその時の表情がたまりません。
そんな
ありがたいお客さまと10年。
10年で長い人で10時間。
なんとも不思議な時空を旅させせていただいております。
改めまして、この10年間で
竹田写真館にお越しいただきました皆さま、
竹田写真館に関わっていただきました皆さま、
「竹田写真館の十周年展」に携わっていただきました皆さま、
ありがとうございました。
今回このような機会を設けさせていただいて、
今までの10年に一旦、
いい区切りをつけることができました。
今までを振り返り、
これからにむけて整理する
良い機会になりました。
お客さまの竹田写真館への思いもたくさん聞かせていただき、
たくさんの愛と力をいただきました。
これからも感謝をしながら、
一組一組のお客さまとの時間を大切にしながら、
良い時間を積み重ねていけるよう精進します。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
竹田写真館の十周年展 特別公開 10組の家族写真 09
コロナ禍で途切れてしまった
お客さまもいますが、
徐々に戻ってきてもらっています。
それでも2、3年
お会いできていないお客さまもいらっしゃいます。
逆にコロナ禍からのお客さまで
もう3回お越しいただいている方も
いらっしゃるわけですから、
時が経つのは本当に早い
そう実感します。
まだ未知だったウィルスに
目まぐるしく変わっていく
状況の中で
小さい写真館とはいえ
様々なジャッジが求められました。
結果、感染拡大当初は
竹田写真館も約三ヶ月間、休業させていただきました。
医療機関や関係各所に
負担をかけないようにということも、
一つ理由でした。
あと学校が休校になったことも大きかったです。
そして「不要不急の外出を避ける」
この言葉が常に引っかかっていて
写真館は生活維持に必要かというわれると
必要じゃないと言わざるを得ない。
写真館は非常時に必要ない。
そんな理由で休業しました。
その間、
ご予約いただいていました
お客様にお断りのメールをすることが
本当に辛かったです。
ちょうど卒業、入学と
新しいスタートのタイミングでしたが
自らが決断したことで。
写真が撮れない。
自ら強い思いを持って始めた
写真館の存在意義を
自らが否定してしまっているようで、
本当に辛い時期でした。
でも同時に
たくさんの当たり前の日常に
感謝できるようにもなりました。
色々と条件を設けながら
写真館を再開した際は、
皆さん
どんなテンションで
お越しいただけるんだろう?
マスク姿で
お子さんは笑ってくれるんだろうか??
不安でいっぱいでしたが。
皆さん普段通りで
たくさんの温かいお言葉もいただけました。
お子さんに至っては
本当にコロナ前と何も変わっていない。
その姿をみて、
もう何があっても休まないと決めました。
わずかな間でも変化があるのに、
そのことをテーマに始めた写真館なのに。
非常時でも
命は誕生するし、死も当然訪れる。
写真が今必要かどうかは
お客さまが判断することで、
写真館はずっと開けておかないといけない。
再開後の皆さんのいつも通りの笑顔で
そういう考えに至りましたし。
本当に支えていただけました。
10年の中に、
こんな大変なことが起きるとは夢にも思っていませんでしたが、
ようやく、写真館も日常を取り戻しつつあります。
竹田写真館の十周年展 特別公開 10組の家族写真 08
ご近所の方もいらっしゃれば
本当に遠方からお越しいただく方も
いらっしゃいます。
近畿一円、
兵庫の真ん中からの方もいらっしゃれば、
大阪の南の方、京都の北の方、
滋賀から、奈良から、和歌山から。
福井からお越しいただく方もいらっしゃれば
大分から、静岡から、広島から。
そして愛知から、神奈川から、
また東京から、
一番遠い方で宮城から
お越しいただいた方もいらっしゃいました。
山ほどある写真館の中から
わざわざこんな週末だけの
大阪の小さな写真館めがけて
お越しいただけて
めちゃくちゃ嬉しいです。
近くても遠くても
お客さまはお客さまなので
当然、不公平はないのですが、
わざわざ交通費を出して
長い時間かけてお越しいただいているので
満足いただける写真が撮れるように
嬉しさを隠しきれない中、
いいのか悪いのか
自然と力が入ってしまいます。
竹田写真館の十周年展 特別公開 10組の家族写真 07
一年目ではまだまだ
お互い緊張してても、
数年後には親戚のおっちゃんに
会いに行くようになっていく。
自然な表情が出てくる。
そんな写真が撮りたく、
そんな写真館をやりたくて、
「毎年撮る」ことをテーマに掲げました。
年々関係性を築いていける
そんな写真館になっていけば
そういう思いでした。
煩わしい問診票も、
いつ撮影が始まるの?
というくらい撮影前に
たくさんお話しするのも
全てその想いの
延長線上なのです。
お子さんとの距離感もそうですが
意外とお父さんとの距離感にも
重要な役割をはたしています。
皆さん全てではないですが
奥さま主導で写真館に来られる方の割合が
圧倒的に多いです。
特に僕に近い年代の方ですと顕著です。
僕くらいの年代の男性は
シャイな方が多く
もちろん写真に対してもシャイです。
初年度はあまりしゃべってくれません。
こちらからの問いに
業務的に回答いただける
そんな感じです
でも3年4年と経つうちに
自ら喋って下さったり、
質問して下さったりします。
身の上話をして下さいます。
最近ハマっていることも教えて下さります。
そうなってきた時に
いい写真が撮れる確信が湧いてきます。
長い年月をかけて
辿り着く瞬間。
毎年撮ることで生まれる関係性。
こんな時は心の中で
「よっしゃー」と
叫んでいますし、
鳥肌が立っています。
そんな写真館なので
いきなり
いい写真撮ってくれると思わないでください。
数年後にいい写真が撮れるように
そう思っていただければ幸いです。
竹田写真館の十周年展 特別公開 10組の家族写真 06
親御さんの一年はほとんど変わりません。
でもお子さんの一年には毎回毎回、
本当にびっくりしています。
というのも来られる前に
今までのお写真を見ながら、
ある程度の予想をしているのですが、
ほとんどのお子さんが、
その上をいきます。
大体、最初のお出迎えの挨拶が
「こんにちは!」とか
「ありがとうございます!!」ではなく
「おおきなったなぁ〜」
「めちゃ背ぇ、のびてない??」
から始まります。
体だけでなく、
めちゃめちゃシャイで、
心を解くのに時間をかけて撮影に臨んだ、
そんなお子さんが
ある年から入ってくるなり
「おっちゃーん」と太ももの上に座ってきてくれたり、
その逆もあって、
今まですごく親しげにしてくれてたのに
ある年から、急によそよそしくなったり。
でもこれは両方成長で、
自分自身でも思い当たることがあります。
体も成長するけど心も成長していく。
そしてそんな皆さんの変化を切り取る。
毎年お越しいただけるお客さまは
それだけたくさんの変化を残せますから
当然嬉しいですし、
毎回その年々のお話を伺いますから
よりたくさんのことを知ることができます。
下手したら親戚のおじさんより
会っているんじゃないか
詳しんじゃないか
と思うこともあります。
おかしな話ですが、
撮影するよりも会ってお話しすることに
比重が移っていってるような錯覚にも陥ります。
でもそんなうれしいお客さまと
同じくらいで
数年ぶりにお越しいただくお客様も
実はすごく嬉しいんです。
竹田写真館のこと
覚えてくださってたんだと
嬉しい気持ちになりますし、
前回の撮影
ちゃんと喜んでいただいてたんだ
ということに安堵するからです。
「毎年来れてなくてすみません」
と何か申し訳なさそうな方もいらっしゃいますが、
いえいえ!!
僕はこのような気持ちでいます!!
「毎年撮る」ことは
ノルマではなくテーマです。
大事なのは通っていただける
ことだと思っています。
ただ時間が経ちすぎると
お子さんの成長に
僕の予想と思いが全く追いつかなくて、
玉手箱かタイムマシーンか。と
当然ながら、さらにびっくりします。
竹田写真館の十周年展 特別公開 10組の家族写真 05
「竹田写真館の十周年展」の展示は
写真館の歴史というよりも、
それぞれのお客さまの歴史。
そのものでした。
1、2年ではそれほど変わらないことも、
4、5年では変わっていきますし、
4、5年でもそれほど変わらないことが、
10年では大きく変わっていきます。
体の変化はもちろん
ヘアスタイルや着ているものも
当然変わっていきます。
そしてなにより10年だと
時代も大きく変わります。
体の変化もあれば、
心の変化もありますが
この時代の変化こそが
愛おしく感じる部分でもあり、
1年や2年では醸し出せない部分です。
とても重要なことは、
晴れ着のお客さまもいらっしゃいますが
普段着の、日常のお客さまだからこそ残せる。
その時代、時代。
というところは間違いなくあるなと思います。
4、5年前の服は残っていても、
10年前の服はなかなか残っていないですよね。
やっぱりそういう愛おしさが出てくるのは
10年くらい経ってからかなと
今回の展示を見て思いました。
でも、
続けてみてわかったことは
変わらないものもあるんですね。
そこが魅力的です。
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