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2020.06.15

わたしの写真館




コロナ騒動の真っ只中、今年3月。
137年の歴史を誇る写真館が、
その長い役割に幕を閉じました。

徳島県で代々続いてきた立木写真館、
著者は、1980年NHK朝の連続ドラマ小説「なっちゃんの写真館」
のモデルになった4代目立木香都子さん。
三人兄弟の母でもあり、次男は写真家の立木義浩さんです。

今までたくさんの写真館にまつわる
物語を読ませていただきましたが、
大部分が、著者は写真家本人ではなく、娘さんや、お孫さんで、
自身の記憶や、ご家族、ご兄弟、残されたたくさんの写真を元に
在りし日の写真館に想いを馳せ、お話が進んでいきます。
そして戦争とともに多くの物語も終わりに近づいていきます。

今回のこちらの著書は、
写真館をされている本人が書かれているということで、
技術的な部分が書かれていたり、
写真をやっている人でないとわからないニュアンスも含まれています。
カメラマン、写真館を営む人の気持ちも書かれていて
勉強になる部分がたくさんありました。
また戦後の写真館の姿も描かれていて、
近年に至るまでの写真館の道筋やイメージが垣間見れました。

戦前はまだ一部の人のためのものだった写真館が、
戦後、日本が復興して、人々の暮らしが良くなっていく中で、
高度経済成長期を迎える頃には、
日本中の多くの家族が写真館を利用する時代になったと思います。
本を読みながらそんな写真館が盛況だった時代が想像できます。
そんな時代の中でも立木写真館は
大きな存在であったんだろうなと思います。
アメリカ営業写真家協会の写真展に入賞し、
日本人として初めてその機関紙の表紙に選ばれたり、
今では当たり前の結婚式の前撮りも
こちらが始められたものだそうです。
技術と設備を常に向上させ、お客様をおもてなす気持ちが
そういったアイデアや行動として形になっていたことが
本を通して容易に想像できます。

そういった写真館が使命を終えるのは
なんとも言えない複雑な気持ちになります。
色々と勉強させていただいて自身の写真館にも
反映していきたいと思います。